儀助<銀色(ねこねこソフト)>

生きるために殺し、今日を食い繋ぐ


(C)ねこねこソフト
生きる目的も特に無く、かと言って死にたいとは思わない。
そんな儀助は日々を食い繋ぐため、逢津と呼ばれる峠にて通行する人間を殺して食料を奪う、野盗のような毎日を送っていた。
そんなある時、色街から逃げ出してきた少女と出会い、行動を共にすることになった。
自分以上に不可解な彼女の言動に、儀助は生きる意味というものを多少考え始めていた・・・。
だが心を開こうとしていた名も無い少女が殺された時、儀助はもはや生きる気力を失ってしまった。
後は自分にもこの少女にも優しくなかった世界の中で、何事も無かったかのように力尽きるのみ・・・。

好感度  6
忘れられない指数  9
燃え度  7
弟子入り志願発生率  4
 

 儀助<どっちかって言ったら>


独自調査と思い込みによる詳細

 概要 説明
容姿 粗雑でいて優しさの微塵も感じられない姿 その風体はまさに野武士。暗い道を辿る者にしか醸し出せないオーラがそこにある。
性格 弱い奴が死に、強い奴が生き残る。そして人は信じてはいけない 手痛い裏切りに合ってから、友情も愛情も偽りだと思い知った。だから信じるのは自分の力のみで、他人になめられない為にその力を強化するのみ。
言動 通行人を襲い、殺し、飯を強奪する。途中で出会った名も無い少女を気遣いながら・・・。 殺して食うだけの毎日。その通常の精神を崩壊させかねないその日暮しの中で、名も無い少女の存在は、儀助にとって人間としての何かを思い出させたのかもしれない。
しかしいつかそんな異常な日常には必ず終焉が訪れるもので、その結果が余りにも悲しかった・・・。
趣味 追い剥ぎ 生死の狭間にいる人間にとって、趣味などと悠長なことを考える余裕は無い。
特技 剣術 弱い奴が死ぬのなら、強ければ生き残れるのなら、その強さを手に入れるしかない。
取るに足りない農民だった儀助は、ただ生き残るために剣の道を選んだ。

儀助の独白

喰うか、喰われるか―――


食わなければ人は生きていけない・・・。
だから食い物がいる。

だが俺は無職。仕事もないから飯にありつけない。
貧しい奴が生きていくには辛い世の中だ・・・・。

だけど俺が喰いっぱぐれることは無い。
なぜなら俺には力があるから・・・。

その力とは、剣術。
平和にうつつを抜かして暮らす凡人達を遥かに上回る剣の腕が俺にはある・・・。

この剣を以って自分より弱い奴を狙い、そして殺す。
そしてその後ゆっくりと荷物を吟味して食い物にありつくわけだ。
いわゆる追い剥ぎという人種だが・・・。

別に悪いことだとは思ってない。
これは全て
生きるため・・・。
俺が生きるためなのだから・・・・。

だから容赦なく斬らなければならない。
なるべく自分より弱い奴を選んで、もし強い奴に出会ってしまったならどんな卑怯な手を使ってでも、
相手は必ず殺さなければならない・・・。
そうしなければ死ぬのは自分なのだから・・・。


弱い奴から騙し取り、奪い取る。
これは、当たり前・・・。

自分が助かりたくて、そのために他人を蹴落とす。
これも、当たり前・・・。

他人のことを考え気遣う素振りを見せる奴もいるが、そんなものはただのまやかしだ。
そんなに他人が大事なら、何も言わずに俺に握り飯をよこせばいいだろう。
でも誰もそれをしないということは、つまり他人のことなどどうでもいいという裏返しに他ならない。


そもそも人は一体誰のために生きている

知れたこと、
自分のためだ。
それ以外に何も無い・・・。


誰もが気付かない振りをしているが、俺は知っている。
自分が生きていなければ何も意味を持たないこと。
誰もが
この世で一番大切なのは自分なのだということを・・・。

ただ、弱い奴が死に、強い奴が生き残る。
そんな
弱肉強食を、俺は知ってる。

弱い奴には決して手が差し伸べられないという当たり前。
そんな無情な現実を、
俺は痛いほど知ってるぞ。


だから俺は偽ることなく、
自分の為だけに、生きるために・・・、


全て斬るっ!!


そういうわけで、俺は遠慮なく人を殺し続けるだろう。
この暴挙が終わるのは、俺が死んだ時だけ・・・。





不信―――


この世は裏切りに満ちている。
だから誰も信用してはならない。

友情などうわ言。
信頼などまやかし。
手の平は返す為にある。

昔他人を信じていた時もあったけど、
あの時の俺はただ、おめでたかっただけ。
世間知らずだっただけだ。

俺達貧しい家族の行く末などお構いなしに、自分達の安全だけ考えていた大人達。
その中でも分かり合えていると思っていたあいつ、親友だと信じて疑わなかったあいつ。
そいつら皆が俺を裏切ってくれた時、ようやく気付いた自分の甘さ。

俺は他人を信じることを止めた。
止めざるを得なかった・・・。


そして唯一俺の心の拠り所だった肉親と兄弟を殺された時を最後に、
俺は泣くことも止めた・・・。

それは甘かった自分への決別で、今ここにいる俺の姿こそが人間本来の姿だ。
だから他人など信じないし、心を許すこともないだろう。
そして遠慮なく弱い奴を殺して日々を生きていくだろう。
それが当たり前なのだと自分に言い聞かせていた。

だが・・






少女―――


コイツは、何だ?




蛍のことさえ知らない無知な奴。
目的もなく彷徨い、生きている実感さえ抱いていない赴。

死にたいとも言わず、
生きたいとも言わず、
ただ、その触れれば折れそうな弱々しい身体で何故か俺に付いて回っている・・・。

一人では絶対生きていけない、弱々しい生き物。
居るだけで厄介を起こしそうな生き物。

それは、俺が最も嫌いな生き物だ。
だからこんな奴はすぐにでも殺してやればいい。
そう疑わなかった。


なのに・・・。



なぜ俺はこいつを殺せなかったのだろう?
そして何故、俺はこいつを連れて回っているのだろう。


今日もこいつは何気なく俺の傍に佇んで、
俺が死ぬ気で手に入れた握り飯をのうのうとかっ喰らっていた・・・。


こんな、食い扶持を減らすだけの役立たず。
さっさと見捨てて先に進めばいいものを・・・、


何故か見捨てられない・・・。


「名前が無いから」。淡々とそう言い放ったあいつ。
夜を照らすだけの蛍を見て「生きてる証」だと寂しげにつぶやいたあいつ。
余りに不憫な、しかもその不憫さにに自分で気付いてないこいつを、
どうしても見捨てられない。


血のついていない握り飯を手に取った時、あいつは「紅くない方がおいしい」と無邪気に言った。
全く笑わないあいつが見せたその笑顔を俺は、
決して忘れられない・・・。


その笑顔は何よりも綺麗に思えたから・・・。







変化―――


俺の日々は変わらない。
違う所は、俺の隣にこいつがいることぐらいなものだ。
それ以外は別に変わらないから今日も食うために人を殺すだろう。


人は殺して当たり前。
そうしなければ俺が生きていけない。
そしてあくまでついでだが、


俺の横に居るこいつも生きていけないから・・・。


だから今日も、通りすがりの誰かを殺して食い物を得る。

それにしても今までに比べて何か違う感じだ。
命を張って生死のやり取りを繰り返すのは俺だけで、
こいつは相変わらずのん気に待ってるだけだけど・・・、


何故かそれが心地よい。


こいつが傍にいるだけで、
たまに笑顔を覗かせてくれるだけで、


目的の無い流浪の旅が何故か輝く・・・。



もしかしたら、俺は少し変わったのかもしれない。
以前のように全て殺すんじゃなく、もっと別のやり方。
そんなものがあるんじゃないかと、最近少し思うようになった。


それは多分、


傍にこいつが居るから・・・。


そして不幸な生き方じゃなくて別の生き方、別の幸せ。
もしかしたら、そんな何かを見つけることが出来るかもしれない。
俺も・・・、


そして出来得るならこいつも・・・。


そして今、奴を喜ばそうと思う自分が居て、
それを見て懐かしい何かを思い出す自分が居る・・・。


やはり俺は、少し変わったに違いない。
命の大切さとでも言うのか?
甘くなったとも言えるが、それでも俺はこいつのおかげで忘れかけた何かを思い出せそうな気がするのだ。


でもやはり世は無情。
多少甘くなった俺をあざ笑うかのように、今度は他人が俺達に危害を及ぼしてきた。
別に自分一人ならどうとでもなるのだが・・・。

こいつが足手まといになった。
やはり心が甘くなるとロクな目に合わない。
最初の自分に立ち戻り、こんな奴はさっさと切り捨てた方がいいのかもしれない・・・。


だがそんな重いとは裏腹に、奴が重症を負わされた瞬間、
俺は大いに動揺してしまった・・・


もしコイツが死んだら・・・。
そう考えた時、
至って面白くなかった


口では足手まといと言っていても本心は偽れない。
俺の本心とは、
「こいつに死んで欲しくない」
ただ、それだけだったのだ。


とにかく俺は、こいつを助けたい。
しかし・・・





罰 ―――



やっちまった・・・。

昔のように非情になりきれない俺。
今に自分に仇を為すだろうと確信していた、この
甘くなってしまった俺の心・・・。


あれだけ人を信じるなと誓っておきながら、
見も知らぬ村娘との約束などを信じたばっかりに、このザマ・・・・。
俺はあいつと過ごしている間に、目が曇ってしまったのだ。
あいつに目を奪われるばかりに、周りの人間を洞察する力を失ってしまったのだ。
誰もがあいつと同じなわけがないのに。

少なくとも、あいつ以外は誰も信じちゃいけなかったのに・・・。


でも多分、これは罰・・・。


因果応報。
今まで殺してきた人間の数その全てのツケが回ってきたに過ぎない・・。


様々な罪を犯してきた俺に今、罰が降りかかり、
結果として無様な俺の姿がある・・・。

今まで俺が見下ろしてきた奴等が今、俺を見下ろして、
人の気などお構いなしに相手を殺そうとしている。
昔の俺がそうであったように・・・。


もはや俺もこれまで。
こうなった以上は俺の命が消え失せるのも時間の問題だろう。
だけど仕方ない。
これは
なのだから・・・。


そして俺も、ようやく楽になれるかもしれないのだから・・・・。



だけどその前に一つだけやることがある。
後少しだけでいいから、その罰を後に回して欲しい理由があった。


「あいつの命だけは助けたい」。
それが、俺の最後の願いだ・・・。


恐らくは俺の帰りを待っているだろうあいつに、もう一度生きるための命を・・・。
今まで幸せになれなかったあいつが、せめてその意味を掴むまでの時間を・・・。


俺はただ、あいつの元に走った。
しかし・・・






涙 ―――


今、俺の目の前で、こいつは安らかに眠っていた・・・。


いつも俺の意表を突いてくれたから、きっとまた予想外に生きているだろうと思ったのに、
あっさり死んでしまいやがった。


俺が来るまで頑張れって言ったのに、何で死んだ?
あれだけ俺が生きてろって頼み込んだのに、


何で死んじまったんだ?


結局こいつは俺を裏切った。
今まで俺を裏切った奴等と同じように、裏切ったんだ。
俺との約束を破って、俺の願いを打ち砕いて、


俺の気も知らずに・・・。


そんな裏切り者に、恨み言の一つでも言ってやりたかった。
だけど、


こぼれ出てきたのは、涙・・・




だって、やっぱりこいつには生きていて欲しかったから・・・。




俺と同じく、この世界にとっては取るに足らないちっぽけな存在。
似た者同士だからこそ寄り添った。

俺と同じく、誰からも必要とされなかったこいつ。
でも俺にとっては必要だった。

お前の命はあまりに儚かったけど、
俺にとっては尊い命だったんだ・・・。


なのに、終わりはあっさりと訪れて・・・。


そんな大切なものをこうも簡単に失ってしまう現実が悲しい。
弱々しい俺達を最後まで鞭打ってくれた、優しくない世界が悔しい・・・。


ちくしょう……
ちくしょうっ.……!!






おまえに何かしてやりたかった。
生きる意味を与えて笑顔を与えて、俺はその笑顔を見てついつい顔を綻ばせるそんな日々・・・。
二人で生きていればいつかそんな日が来るんじゃないかと思っていたのに、

結局俺はおまえに何も出来なかった。
そして俺も、もはや生きる気力が無い・・・。


だけどこれで消えてしまうなんて、余りにも哀し過ぎる。
だからせめて、

誰か俺達のことを見てほしい・・・
こいつのことを見てほしい・・・。


俺は儀助、
そしてこいつは・・・





あやめ ―――


こいつの名前は、あやめって言うんだよ・・・。



今、目の前で弱々しく咲いている、一輪の花。
いつかお前が好きだと言って聞かせていた花だから・・・。



お前の名前は、あやめ。
「おまえ」なんかじゃなくて、「あやめ」っていう立派な名前がある。

誰も見てないし誰も知らないかもしれないけど、
俺はお前を知っているぞ。


おまえは、あやめだ。



だから俺と一緒に・・・。






夢 ―――


あやめ、握り飯を食うぞ。
血のついてない、紅くない、真っ白な握り飯だ。

お前は俺の隣で嬉しそうにその握り飯を食う。
幸せそうなその笑顔は、俺がずっと待ち望んでいたものだ・・・。






さああやめ、一杯食え。
今日もお前の好きな握り飯が喰いきれないほどあるぞ。

空腹なんか気にしなくていい。
俺はお前のためにいくらでも頑張れるから・・・。






喰い切れないんだったら俺も一緒に食ってやるぞ。

お前は「一人じゃない方がおいしいね」とでも言ってくれるのかな・・・。






じゃあ、二人で食べるか。

二人で食べたいな、あやめ。


二人で・・・、食べたかったな・・・。















     
     
俺はお前と一緒に生きたかったよ、あやめ・・・