来生紫苑<雪語り(Tarte)>
ぬくもりを覚えてしまった雪女は、人間よりも温かかったと云う・・・


(C)Tarte
孝志が参加したスキー教室の途中で知り合った女の子。
いつも明るく存在感を主張しているが、実は彼女は雪女であった。
本来雪女は人と関わってはならないのであるが、子供の頃孝志と出会ってしまい、その楽しみを覚えてしまった。
それを再び味わうべく、今回スキー教室で姫神山へ出向いてきた人々の記憶を操作して、学園の一生徒としてもぐり込んでいる。
久しぶりに出会った孝志に恋焦がれて独り胸を高鳴らせるが、当の孝志は昔の記憶を消されているため紫苑との思い出を知らない。
しかし、あるとき孝志は紫苑のことを思い出してしまい、共に居たいと願った。
紫苑も心からそれを望んでいたが、既に雪女としての力を使い果たしてしまい、はかなく消えてしまう。
何も出来なかった孝志はただ涙し、その後衝心の時を過ごすが・・・。

いつもの登校中、転校生がやって来た。
紫苑のことを引きずる孝志はそれに対して何の感慨も抱かなかったが、本人を目の当たりにした瞬間泣き崩れた。
なぜなら彼の前で微笑む少女は、決して忘れるはずも無い、あの娘だったのだから・・・。

それを、奇跡という。
好感度 8
忘れられない指数 6
萌え度 6
信者発生率 5
来生紫苑<どっちかって言ったら>

 


独自調査と思い込みによる詳細

 概要 説明
容姿 透き通った肌。輝く笑顔 雪女に相応しく、白く白く透き通っている。見惚れていると、今度はその笑顔に見とれてしまう。本能から素敵と言える女の子。
性格 人見知りゼロパーセント 底抜けて人懐っこい紫苑は、持ち前の明るさと笑顔で誰とでも打ち解ける。ぬくもりを知らなった彼女にとっては人と触れ合うことは何よりも楽しかったに違いない。
言動 通常は生徒に混じってスキー等を嗜み、夜は雪女としての責務を全う。 人間と雪女。二足の草鞋を履く少女。
可愛い顔してかなりのハードワーカーであった。
趣味 孝志とオセロとかしていた。 単に孝志と遊びたいだけだったとも言える。
何しろドキドキしちゃう人だから。
特技 雪を降らせる、雪を止ませる どういう理屈か、雪女という存在は雪を自在に操れるらしい。
それは自然現象への介入。つまり神に等しい所業。その神の如き存在が好きな男の子の前ではしおらしくなっちゃって、ひとりでドキドキしていたりする。
このギャップは背徳感を募らせるに十分だ。

私的分析


古参のメンバーが評価されるという決まりは無い。
途中参加だからぞんざいにされるとは限らない。

大切なのは出会いの瞬間、第一印象。
ただ一つの微笑みによって陥落することも、時にはあろう。
紫苑とは、正にそうであった。


ある冬の日。
慣れないスノボで苦戦する新見孝志。
初心者相応に無様に転倒、危なっかしいフォーム、

幼馴染も同級生も先生も、
周りの女性は全て自分と違うところでスキーを楽しんでいる中、孝志はただ独り頑張る。

転んで、起きて、また転んで・・・。

それを繰り返している時、
尻もちを突いている俺に声をかける存在があった、
その声につられて見上げた俺を、
温かい笑顔で見下ろす少女が居た・・・。

そこは、見渡す限りの銀世界
照りつける太陽。
見上げた先の陽の光がこの上なく眩しい。

でも、もしかした俺は、

その少女の微笑が眩しかったのかもしれない


彼女は来生紫苑。

人懐っこく顔見知りしない性格は好感を呼び、
屈託の無い笑顔は突き抜けて素敵。

だから気が付けば彼女の周りにはいつも人が居て、
気が付けば
彼女を取り囲む空気はいつも暖かかった・・・。

そんな眩しい彼女は来生紫苑。
俺はこの時既に彼女に心奪われていたのかも知れない・・・。

いつも明るく、いつでも笑っている来生紫苑の素晴らしさ。
紫苑の魅力はそこから展開されていく。

彼女は多分、
人が好きなのだろう。
中にはひねくれて育ってしまう人もいるが、紫苑はそことは無縁の存在。
何故なら彼女にとって、
人との触れ合いこそが何よりも大切なものだから。
遠い昔、孝志がそれを教えてくれたから・・・。

つまり、過去に孝志は紫苑と出会っている。
しかし、目の前の孝志は紫苑のことを覚えていないのであった。
故に、この出会いが仕組まれたもので、さらに言えば紫苑が仕組んだものだということを、
孝志はまだ知らないのであった・・・。

それもそのはず。
彼女の本当の正体は
雪女
雪を操り、記憶を操る人外の者。
人との接触を許されることもなく、またそんな発想すら抱かない存在が雪女。

当然紫苑もその一人のはずで、生涯人と触れ合うことも無く、雪女として山を守り続けるだけの存在であるはずだった。
そこに悲しみは一切存在しない。

何故なら、知らなかったから。
心を通わせるということ、人のぬくもりを・・・。

子供の頃、孝志と出会うまでは・・・


だが、彼女は知ってしまった。
幼い頃、孝志と過ごした短い時間によって、
人と触れ合うことがこの上なく幸せだということを・・・。

でもそれはそれは雪女にとっては異端。
本来
あってはならないこと。
雪女は人と接触してはならないのだから・・・。

だから孝志の記憶を奪った。
幼心に抱いた温かな感情。
経験したことの無い楽しい日々、全て忘れるために・・・。

しかし紫苑は結局それを忘れることが出来ず、気が付けば人の中。
幼い頃の記憶を頼りに、
幸せな記憶を再び味わいたくて、
再び人間世界に出てきてしまったのだ。

人に会うため、
主に孝志に会うために・・・。

そして今、目の前にいる孝志。
幼い頃の優しい眼差しそのままに、より男らしく、格好良く・・・。
そんな彼を前にして、密かにドキドキしているこの娘が、
この上なくいじらしい。

でも同時に切ない。
幼い頃孝志に抱いた友情を恋に変えて孝志に接するも、彼はその思い出を共有していないのだから・・・。

記憶を消したからとは言え、自分のことをまるで思い出せない孝志。
その想い人を見て
独り苦しむ雪女。
辛いところである。

しかし、孝志にとっても雪女との想い出は大切なものだったのだろう。
多少の神秘と、深層までに残り続ける想いが融合した時、
決して蘇ることの無い記憶が、紫苑と過ごしたあの頃が、
孝志の中にも蘇ったのだった・・・。

それは
一つめの奇跡

その奇跡に戸惑いながらも紫苑は抑えきれない想いをぶつけ、孝志はそれを受け止める。

しかし、奇跡には代償を必要とするもの。

元々人間と共存できない雪女。
だがそれを強行した紫苑。
体はもう限界
それが、奇跡の代償であった・・・。

もうすぐ消えてしまう紫苑。
だけど孝志には知られたくないから、また記憶を消そうとする。
自分を忘れてくれと言う。

だが、それは孝志にとって聞けない話。
せっかく思い出したのだから、せっかく一つになれたのだから・・・、
「誰が忘れてやるものかよ」


頑固な孝志を目の前にして、紫苑は涙がこぼれ落ちそうになる。
これほど愛されていることが、ただ嬉しくて・・・。
でも同時にこれから訪れる別れが、ただ悲しくて・・・。

それでも最後だからこそ踏ん張って、孝志の心に傷を残さないように、言う。
「充分幸せだったからもう思い残すことは無い」。
そう言って微笑んだ。

それは紫苑の悲壮な決別。
この上ない気遣いをそこに隠しながら・・・。

だが孝志はすぐに察知した。
それが嘘であることを、その涙の中に見出した。

そう・・・。
幸せなのに、

思い残すことが無いはずなのに、紫苑よ・・・


どうしてお前は泣いている?


笑顔がひたすら眩しかった紫苑の顔は、今は悲しみの表情しか浮かんでいない。
つまり、幸せじゃない。
心残りがあり過ぎるということではないか。

だからそんな望みは聞いてやれない。
紫苑を忘れることなど絶対にしない。

何よりも、

紫苑に涙は似合わない

だから笑っていて欲しい。

そう思う孝志の愛情は多分尊いもの。
だけど消え行く自分はどうしようも出来ない。
そしてそれは孝志の心に大きな傷を残すことになるだろう。

だからこそ忘れて欲しかったのだ。
自分が悲しむより、孝志が悲しむ方がよっぽど辛いのだから・・・。

しかしその願いも虚しく、紫苑は運命に抗えず、消えてしまった。

孝志が教えてくれたぬくもりを糧に人に近づき、
より人間らしくあろうと思い、結果人間よりも人間らしかった紫苑。
ずっと優しいままで、その存在をこの世から消した。

突然の出来事に孝志はただ呆然とするのみ。
彼の腕からは紫苑のその重みも温もりも消え去って、
後に残ったのは彼女の形見とでも言わんばかりの小さな結晶。

孝志の手の平で、それはただ微かに輝く。

まるで紫苑の魂が宿っているかのように・・・



それはただ、虚しい光景。
だが、恐らく紫苑と言う雪女の一生の中で一番輝いていた時だったろう。

そんな心優しい雪女の一生を、
誰かが覚えていてくれるのならば、
誰かがいとおしく思ってくれるのならば、
来生紫苑としての魂は輝き続けるに違いない・・・。

せめてそう思わずには居られない孝志。
紫苑の心を分かってやれたのは自分だけだから。
だからこそ、彼女が残してくれた形見だけは決して手放すことは出来ない。
思い出だけは消えることは無いのだから。

例え今その心が傷付いていても、
いつか傷は癒え、再び歩み出せる時が来るだろう。


だけど・・・、
本当は君と共に歩みたかった。
出来うるならもう一度・・・。



沈んだまま何とか日々を生きようとする孝志。
心の傷はまだ癒えていない・・・。

そんな心ここにあらずの孝志。
しかし今日、それが一気にMAXにまで立ち戻る。

一撃必殺の再会。
願って止まなかった、でも叶うことのないと思っていた再会が訪れたから・・・。


そこは、風吹き抜ける学校の屋上。
照りつける陽の光がこの上なく眩しい。

でも、そんなものは気にも留めない。
眼前には何より眩しいものがあるから・・・。
それは、

出会った時と変わらぬ紫苑の笑顔



それは、
2つめの奇跡だった・・・。


孝志が忘れなかったからか、
紫苑が望み続けたからか・・・。

誰も知るところではない。
ただ、孝志の手の平に握られていた小さな結晶は、
人の形を為して今、彼の目の前で存在を主張していた。

だから今はその事実にだけ涙して、
その奇跡に感謝して・・・。


決して離すことはない。
それは雪女だった少女の忘れられないぬくもり。

今は紫苑という名の人間の少女のぬくもり。




独りの世界から温かい世界に。
雪女から人間に。

消える心配、失う不安、全て過去のもの。

願った場所で、望んだぬくもりに包まれて、
今はただ、幸せを噛み締めるだけでいい・・・。