望月綾芽
<ONE2(BaseSon)>
永遠の世界を知る少女
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| 概要 | 説明 | |
| 容姿 | ミステリアスビューティーの完成型 | シャープでありながら、丸み漂うその姿。 クールビューティーには一歩及ばないが、ほぼ理想的な容姿をしているだろう。結構可愛いし・・・。 |
| 性格 | 無関心無感動 | 彼女の辞書に干渉という文字は無い。 それでも動物や植物に向ける悲しげな瞳。 本当に彼女は冷たい美少女なのか・・・。 |
| 言動 | 屋上で読書 | 和宏にお気に入りの場所を占領されても、彼女にとっては風景の一つ。 |
| 趣味 | 読書 | ただ文字に目を走らせるだけで、彼女は理解など不要という。もう少しで冷たい知的少女が出来上がったのに、惜しい・・・。 |
| 特技 | 無感動 | 平然とストリップショーを披露する彼女に、男達がざわめく。 「いいのかっ!押し倒しちゃうぞ俺!」とは和宏とそのムスコの言。 あんな美人を押し倒すなどと・・・、とてもやってみたい気がする・・・。 |
私的分析
明るく振舞う転校生・和弘。
彼は誰とでも仲良くなれるし、どんな相手でもあしらう自信がある。
そんな和弘の目の前に、一人の少女が立ち塞がった。
和弘はいつものように、努めて明るく爽やかに自己紹介を行った。
だが・・・
「望月綾芽。よろしく」
「じゃあ」
逆にあしらわれてしまった・・・。
余りといえば余りな態度。
そっけない彼女の返答に、次なる言葉が浮かばない。
彼女には簡単に近付けなかった・・・。
触れる事物全て無関心。自分のことですら他人事。
ただ、息をしてそこに存在するだけの、言わば空気のような存在。
かと言って存在感が無いわけでなく、むしろ一挙手一投足に目を奪われる。
彼女という存在は、余りに異質すぎた・・・。
しかし彼女自身は、そんな周囲の動揺すらもまるで気に留めない。
何者にも流されず、自分から流れを作ることもなく、やはりそこに在るだけの存在たらんとしている。努めてそうしているのではなく、ただ無機物的に・・・。
どこか血が通っていない、機械的で浮世離れな彼女の日常はつまり、
綾芽は人に関わりを求めない。
その代わり相手からの関わりも許さない。
和弘がしつこく纏わり付いても、それは空気と同じこと。
あくまで自分だけで動く彼女との溝は、決して埋まることが無かった。
周囲に興味を抱か無い彩芽。
絆を求めることが無い彩芽。
それは他人への拒絶で、周囲への拒絶で、つまりこの世界との隔絶だった。
それでも彼女は普通の人間、普通の女の子に違いないのだ。
今、目の前で無防備に眠る彩芽・・・
それは、日常で誰もが見せる顔。
自分達と何ら変わることは無い、人としての姿。
やはり綾芽も年相応の少女であるのだ。
だから、諦めない。
彼女と心を通わせることが出来ないなんて、誰が決めたのか?
何事も近付かなければ解らなく、
間違いなく血の通ったこの世界の人間と思える綾芽だから、
ただ、しつこい程にアタックすれば良い・・・。
そこで和宏は言われた。
「もの好き」だと・・・。
そう、確かに物好き。
自分は何もせず、ただ空を見上げている。
彼女は一言も喋らず、ただ小説に目を走らせている。
会話は無く、気遣いも無く・・・。
めげずに、懲りもせず、そんなことを繰り返すだけの毎日。
それは誰が見ても、もの好きと言えたから・・・。
しかし、お互いの存在だけは認識している。
言葉は無いけど、確かに綾芽はそこにいると理解できる。
そして、それはきっと彼女も同じ筈。
和宏が空気と同じならば、爆眠する彼に声をかけることもないだろう。
彼を置いて、そのまま屋上から立ち去っていたことだろう。
でも、彼女は声をかけてくれた。触れてくれた。
つまり、和宏の存在を認めてくれていたのだ。
形は無いけれど、それは一つの絆であった・・・。
そして、鍵を渡してくれた。
しつこい和宏が、綾芽御用達の屋上にいつでも来れるようにと。
合鍵を、即ち彼女だけの特権と空間を、和宏に分け与えてくれたのだ。
その鍵の重さが和宏には心地良い。
この合鍵は、和宏と綾芽を繋ぐ確かな絆。
形在る絆の筈だから・・・。
そんな中で気付くこと。
俺は確かに物好きだけど、それ以上に綾芽好きだということ。
ただ、綾芽のことが気になるから。
その仕草や言葉、全てを意識してしまうから・・・。
和宏はただ、綾芽という少女が好きだったのだ。
だから関わりたい。だから話しかけたい。
自分を見て欲しい、聞いて欲しい。
それが即ち絆を求めることだと確信出来る・・・。
そして多分、綾芽も同じものを求めているのではないか?
確かに綾芽は、まやかしの関係やぬくもりが嫌いだと言っている。
だが果たして・・・、
雨の中、非力に鳴き続ける捨て猫の前で、
無感情な人間は立ち止まるものだろうか?
ネコに対する愛情や憐憫をまるで抱いていなくても、
例えその瞳には何も映らないと言い張っても、
心が無い人間は、訴える生命に決して振り向かない・・・。
何も求めず何の感情も抱かない、とそう彼女は口にした。
しかし、
誰にも可愛がられることがなくただ校庭に咲く寂しい花に、
無感動な人間は、水を与えるものだろうか?
愛でることや慈しむことが目的でなくても、
例え彼女が何も望まないと言ったとしても、
心通わない人間は、懸命な生命を決して庇わない・・・。
今目の前にいる少女は、弱々しく生き続ける花々に水を与えているではないか。
花が成長する為の命を与えているではないか。
その彼女が見下ろす花の名前は「カリナタ」。
花言葉は「期待」。
綾芽の心の内を訴えかけるように、そのカリナタはただ咲いていた・・・。
彼女は何を独りで期待している?
彼女は何を独りで苦しんでいる?
幸せに育った和宏には彼女の苦しみが解らない。
苦しくて辛かったのは、あの時以外に無かったから。
たった一度だけの、ただ一つだけの辛い記憶・・・
「永遠ってあると思う?」
思い出す、あのひとの言葉。
かつて恋した年上の女性・幾美さん。
今はこの世に居ないけど、彼女は儚げに、でも確かに和弘にそう訊いてきた。
それに和宏は答えた。
「永遠なんて無い」と・・・。
形あるものはいつか壊れ、形無いものも必ず変わる。
記憶でさえ、想いでさえ、時間が経てば薄れていくのだ。
全てが時と共に無へと近付いていくものなのだ。
だから永遠など有りえない。
この世界には――――
だからそうじゃない世界。
永遠がある世界。
即ち永遠の世界を求めて幾美さんは旅立ったのだ。
この世に絶望した彼女は自分だけの永遠を選んだのだ。
和弘を置いて、そして彩芽を置き去りにして・・・。
彩芽は幾美さんの妹だった・・・。
だから、こんなにも懐かしい。
だから、こんなにも彼女が気になる。
放って置けばこの世界から居なくなってしまいそうな、そんな危うい存在。
幾美さんと同じように・・・。
だから彩芽を支えたい。
大切な人を失った悲しみは、とても忘れられるようなものではないから。
幾美さんと同じにしたくないから・・・。
忘れたくない・・・。
その言葉は和宏の望みであり、同時に綾芽の誓い。
忘れるということに異常なまでの拒絶反応を示す彼女は、この世界が許せなかった。
病弱で一歩も外に出られない姉のことを、平気で忘れる父と母。
まるで姉が初めから居なかったかのように流れていく周囲が世の中が、ただ許せなかった。
姉は確かに生きていたというのに・・・。
自分だけは覚えているというのに・・・。
だから忘れられなかった。
姉のことを唯一覚える自分が消えれば、姉は何の為に生まれてきたのか解らなくなるからと・・・。
その忘却が、怖い・・・。
その忘却と闘うのが、辛い・・・。
だからその辛さを知っている彩芽は、上辺だけの絆などは決して認めない。
だから絆など求めない。
それは悲しみを拡げるだけだもの・・・。
でも、本当は誰かに知って欲しかった。
姉のこと、そして自分のこと。
独り悲しみ、怒り、世の中に絶望し、それでも独りで闘わなければならない孤独な少女の存在を。
救われない迷路を彷徨う自分に手を差し伸べて欲しい・・・。
絆など無いと思いつつ、どこかでそれを期待している自分が居る。
姉のことを忘れない自分は、確かな絆らしきものを知っている。
だけどもっとその確かな絆を、永遠の絆を示して欲しい・・・。
そう駄々をこねる綾芽はただ、寂しかっただけ・・・。
そんな彩芽の泣き声を、和弘は受け止めた。
そして彩芽は寄りかかる。
姉のことを覚えているもう一人の人間、永遠を感じさせてくれるひとに・・・。
もう独りで背負うのは、疲れたから。
愚痴でも怒りでもいい、この世界を諦めることだけはして欲しくないと、そう言った和宏。
彼は自分を世界に留めてくれたから・・・。
だからこれからは正直に生きようと思う。
大切な人が傍にいて、大切な絆が確かにあって。
それは確かに永遠へと続く道かもしれない。
だからその幸せを、ただ追い求めればいい。
他のことは全て忘れて・・・・。
全て、忘れて・・・?
その時、綾芽は凍りつく。
そして再び気付かされる。
「やはり永遠なんてない」
彩芽はあれだけ忘れまいと誓った姉のことを、もう忘れていたのだ。
和宏との幸せな日常に目が行くばかりに・・・。
そして和弘さえも忘れていたというのだ。
彼だけは忘れないと、信じていたのに・・・。
一つの誓いがもう一つの誓いを消滅させる事実。
和弘と居る限り、きっと姉のことを思い出さなくなるという予感。
綾芽はただ、その事実に絶句する。
そして、その事実を打ち崩せない世界を拒絶する。
永遠の約束は、二つ同時に背負えないもの・・・。
忘れる苦しみと、和弘を愛する心。
綾芽が背負うには、重すぎるもの・・・。
もう耐え切れなかった。
もう何を言っても無駄だった・・・。
どうしていいか誰にも解らないから、
自分に残された道はこの世界から逃げることだけだから綾芽は・・・、
和宏を拒絶し、全てを拒絶し、
最後に「さよなら」とだけ口にして、
この世界から消えた・・・。
その光景が和宏には信じられない。
忘れることはそれほど罪なのか?
それと闘う苦しみは、消えてしまいたいと思える程に辛いことなのか?
答える者は居ない・・・。
だから彼に残された道は、この世界で彼女の帰りを待つことだけ。
決して忘れないように・・・。
彩芽が待ち続けることに疲れたのなら、
忘れることに耐え切れなくなったというのなら、
同じ苦しみを抱き、それに自分が耐えて証明するしかない。
綾芽と同じ環境に挑んでこそ、彼女も解ってくれるに違いないから。
ただ、そう信じて・・・。
そこで和宏は、ようやく彼女の苦しみを体験する。
自分以外誰も覚えていない焦燥、待つために忘れない葛藤を。
彩芽はこんなにも独りで、こんなにも深い悲しみと共に、この世界に留まり続けてきたのか・・・。
今なら彩芽の言葉も解る。
「絆なんて信じられない」
同時に幾美さんの言葉も解る。
「永遠は無いと思う」
やはりこの世界には、永遠なんて無いのかもしれない・・・。
だけど、
それでも待ち続けなければならないと思う。
確かに幾美さんはこの世界を必要としていなかったけど、
彩芽はこの世界が不必要だとは言わなかったから。
帰る場所と理由さえあれば、きっと綾芽は帰ってくるだろうから・・・。
帰る場所は俺の胸。
帰る理由は、忘れないという約束・・・。
決して変わらない約束を、
望月彩芽という少女にきっと届けてみせる。
だから彼女は帰って来る。
彩芽とこの世界を繋ぎ止める糸は、まだ断ち切れていないのだから。
彩芽の帰る場所は、今ここにあるのだから。
後は呼びかけるだけでいい・・・。
そして抱きしめればいい。
寂しがり屋の彼女を・・・。
言葉はそんなに必要ない。
恥ずかしがり屋の綾芽には・・・。
だけど、ただこの一言だけは心から、
「おかえり、綾芽・・・」
待つこと一年間。
それは永遠とも言える長い時・・・。
でも永遠じゃない。
永遠はもっと身近なところにあったのだ・・・。
それは今実感している確かな言葉。
多分生涯変わらないであろう言葉。
「俺は、もの好きだから・・・」
この言葉こそが永遠。
かつて君が、俺に言った言葉だ・・・。
確かに俺は独りで、君も独り。
人はいつだって独りきりだけど・・・。
俺は君の側にきっと居続けるだろう。
何故なら、
俺はこれからもずっと、もの好きのままだろうから・・・。
それだけが、この世界の中で変わらぬ言葉。
それだけが、綾芽と交わした変わらぬ誓い。
二人の中だけの、永遠の約束・・・