狭霧
<銀色(ねこねこソフト)>


誰にも譲れない「居場所」


(C)ねこねこソフト
辺境の里に住む少女。
幼い頃に事故で両親を失ったが、鷲宮神社の神主である一輔に引取られ、以後巫女として働きながら家事全般に従事している。
神社に一時左遷されて来た頼人とそこで知り合う。狭霧は彼の身の回りの世話をしながら、毎日を元気に過ごすのだった。
しかし裏腹に、狭霧の運命は過酷であった。
代々伝わる龍神の伝説。ただの迷信であるが、その怒りを静める為に差し出す生贄が必要とされた。そして彼女がその生贄の役割。10年前から決定しており、今年がその時である。
それでも彼女は、里の人々の為自分の存在意義の為にと、喜んで運命を受け入れて・・・。
最後は頼人の制止も聞かぬまま、進んで濁流に身を投げ出し、短い生涯を終える。
<私的データ>
美人 可愛い 明るい 大人 楽観的 ライト 好き 鮮烈 絶大 絶対
















美人度 可愛さ 性格 言動 思考 好感度 存在感 萌え度 信奉率














不美人 全然 暗い 子供 悲観的 ダーク 嫌い 希薄 皆無 皆無
 

 

 


独自調査と思い込みによる詳細

 概要 説明
容姿 艶のある黒髪。瑞々しい肌 それは自然と共に伸び伸びと育った娘だけが持ち得る、健康少女の証だろう。不覚にも頼人は彼女の肌に興奮してしまう。
性格 元気、おっちょこちょい おっちょこちょいとはどういう意味だろう・・・。
それは事あるごとに皿を割り、頼人に味噌汁をぶっかける狭霧を見て納得すると良い。
言動 神社の掃除、食事、子供達の遊び相手 多忙な雑用。しかし狭霧にとっては習慣。その習慣こそが人の営みのあるべき姿。そう一輔はのたまった。
趣味 琴を弾く 稚拙であるが心を洗われる狭霧の旋律に、寝つきの良い頼人でさえ夢遊病者の如く引き寄せられる。
存在意義 龍神の生贄 それが皆を救う妙手であり、何より狭霧が望んだことである。
命を落としても存在意義を求めた狭霧の、身勝手だが崇高な生き方。
 

 

 


私的分析


頼人が生きる場所。
そこは、国の中心部。
最も豪奢で華やかな反面、人間の汚い部分が最も露骨に顕れる。
謀略や詐術が日常茶飯事の都の中、頼人は人が為す業を嫌と言うほど味わって来た。
今回の都落ちも、そんな人々に生じた闇の部分がもたらしたもの。
強き心を持った頼人には、弱き人々が生み出す心の歪みが解らなかった。
そんな時頼人は、狭霧に出会う・・・。

狭霧が生きる場所。
そこは、都から遥か離れた辺境の里。
何も無い、取るに足りない処。
頼人にとって、そこは自分が居るべき場所ではない。
しかしこの少女の顔は、頼人がかつて経験したことの無い新鮮なものであった・・・。


疑うことを知らず、邪心も無く、平穏に暮らすことが当たり前であるかのように、狭霧の心はどこまでも澄んでいる。

青空の下咲き乱れる、この菜の花のように・・・




何も無くても育つ心。
何も無いから育つ心。
そんなものが世の中にはあることを、頼人は知った。

知らなくても良いこと。
知らない方が良いこと。
追求しないその姿こそ、人間にとって自然で尊いということを、この辺境で強く感じる。


生き方はまるで違うけど、どんな営みの中でも得るものがあった。
だから鷲宮神社に飛ばされたことは、頼人にとって決してマイナスではない。
そこで学んだことは、後に訪れるであろう彼の治世で必ずやプラスになるだろう。



この純朴な少女がそれを教えてくれたのだ・・・




だから狭霧はこのままでいい。
ただ神社の掃除をして、朝食の支度をして、子供達と遊んで。
今まで通り、辛いことなど知らぬまま生きていけばいい。
そう信じて疑わなかった。
あんなことが無ければ・・・。

気付かなかった

狭霧の笑顔が余りにも屈託無く、本心から幸せそうだったから・・・。

彼女が背負う運命の過酷さに、気付けなかった・・・。




子供達の罪の意識が無い「役立たず」という言葉に、
何故あれほどまでに激昂したのか・・・。





人目に触れることも無く、ただ寂しく佇む琴に、
何故憐憫の情を送ったのか・・・。






「要らない存在」
それは狭霧にとって触れてはならない禁句であり、昔の自分そのものであったのだ。




幼き頃に両親を失い、頼る者を失った。
自分の居場所を失った。
誰にも必要とされず、ただ泣いていたあの頃・・・。

だから
居場所が欲しかった
誰かに必要とされたかった。
いじめられたとしても、構われない方がよっぽど怖い。
自分が何のために存在しているか、解らない。
それは死んでいるも同然だと、幼い頃に理解してしまった。




それがたとえ、誰もが忌避する生贄としての役割でも、
その運命には死しか待っていないとしても、
彼女は自分の存在価値を求めた・・・。


つまり狭霧は、無駄死に確定の立場にあるということ。
近い将来死ななければならないのだ。
しかもあろうことか、それを容認しているのだ・・・。



頼人には全く解らない。
解りたくもない。
死の恐怖すら霞む存在価値。
生きることを放棄してまで得る存在価値。
そんなものがあるなど、認めるわけにはいかない。
頼人が生きてきた時間の中で、そんな
価値観は聞いたことすら無かったから・・・。

いや、それよりも・・・。
何の罪も無い余りに無垢なこの少女が、意味もなくただ命を落とすことに耐えれない。
それは頼人の価値観からすれば、理不尽以外の何者でもなかったから・・・。

しかし、それは頼人の
思い込み
狭霧は彼と全く違う思考を巡らせた。
考え方が違う、背負ってきた過去が違う、何より心の強さが違う。
頼人ほど強い人間ではないからこそ、自分だけでは掴み取れないからこそ、弱い人間は必死に、すがってでも自分だけの存在意義を見つけようとする。
命に替えても惜しくない居場所を、狭霧は既に見つけてしまっていた・・・。

ただ、誰かに認めて欲しかった。
誰かに褒めて欲しかった・・・。
全て理解した上で、全て受け入れた上で、自ら進んで生贄となることを望んでいる狭霧。
そんな悟り切った人間を前に、口出しなど誰が出来よう・・・。


もう何を言っても動かない。
狭霧は自分だけの存在価値を見つけたのだから。
誰にも強制されたわけでなく、誰から教えられたわけでなく、自分だけの力で辿り着いたのだから。


だからただ、褒めてやる。
誰も褒めてくれなくても、自分だけは褒めてやる。
自分などでは及ばない、他の誰にも為しえない、彼女だけの生き方。
それが崇高であることを、
本当は狭霧こそが誰よりも強い人間であることを、
決して忘れないだろう・・・。

だから俺は褒めて上げよう、この健気な少女の心を。
そして強く抱きしめよう。

狭霧のぬくもりを忘れないために・・・。


無意識に流れ落ちた涙と共に、
彼女が奏でた琴の旋律を心に刻みながら・・・。





狭霧から教わったことは、生涯忘れられない思い出となるに違いない。
彼女は喜びの上で逝っただろうか?
里の人間達は、少しでも彼女に感謝しただろうか?
狭霧の存在価値を、認めてくれただろうか?

そう吹っ切った頼人。
しかし、そこで衝撃の事実に打ちのめされてしまう。
頼人は知ってしまった・・・。


里の人間達は、狭霧に感謝などしていないこと。
しかも、結託して狭霧が生贄になることを仕組んだ事実を・・・。



狭霧は押し付けられたのだ。
騙されていたのだ。
10年間ずっと・・・。


そんな事実を知れば、いくら狭霧とは言え黙っていられる筈は無い。
他人の幸せの為にと心から願い、進んで犠牲になったのに、それを仇で返される。
完全なる裏切り行為だ。
何より彼女の崇高な決心を土足で踏みにじった。

バカにしている。
狭霧を・・・。
狭霧の心をバカにしている。
しかも彼女の人生を嘲笑する下衆達が、今のうのうと生きている。

そんなこと許される筈が無い。
クズの為に死ぬなど、そんな無意味な人生は無い。
狭霧が死ぬ必要など微塵も無かったのだ。
と、完全なる確信を以って、頼人は彼女を救出した。
しかし・・・、
そこで頼人は、またしても理解不能の打撃を被る。



知っていたと言う・・・。
騙されていたことも、仕組まれていたことも。
狭霧が命を投げ出す行為を無駄死にだとあざ笑った、里人達のことも全て・・・。

それでも尚生贄への道を全うすると言う。
今度こそ、生涯理解不能であった・・・。


狭霧は言った。
誰かが死んで悲しむ人を、二度と出したくないと・・・。
それで深い悲しみに囚われる頼人の気持ちなど、全くお構い無しに・・・。


死を受け入れないのは、心に悔いが残るから。
自分が死んだ時、誰かが悲しんでくれれば、それは幸せ。
狭霧が死ぬと悲しいと、そう頼人は言ってくれたから、狭霧は幸せ。
そして、幸せな上心に悔いが無ければ、人は笑って死んでいける。
狭霧の悔いは頼人に忘れられることで、逆に頼人が覚えてさえいてくれれば悔いは無いのだ。


そして狭霧は知っている。
それを頼人も認めている。

彼女が死ねば、彼はきっと悲しんでくれるだろうこと。
彼は彼女のことを、ずっと覚えていてくれるだろうことを・・・。



だから狭霧に
悔いは無い



だから彼女は死ぬ間際でさえ笑顔だった・・・







きっと生涯解らないだろう、狭霧の心。
しかし否定してはならない、狭霧の生き様。
残酷過ぎる痛みと共に、頼人の思い出に強く強く植え付けられる・・・。






狭霧―――
辺境で出会った少女。
彼女はただ、自分の居場所を探し続けていた・・・。



決して忘れない。
他人の力も、銀糸の力でさえも及ばない、彼女自身が決めた人生を、
他の誰にも掴めない、狭霧だけの
生きた証を・・・。



彼女が精一杯生きたことを、俺は知っているのだから・・・。






狭霧の人生は、輝いていた筈なのだから・・・。