新川豊
<CROSS†CHANNEL(フライングシャイン)>


暖かな笑顔と共に現れ、寒々しくこの世から去った男




(c)フライングシャイン
群青学院生への転入生で、霧の従兄。
太一とは大変ウマが合い、すぐさま親友関係となる。

そんな豊は片足が不自由。しかし群青へ入ったのはその肉体的障害のためでは無く、彼の精神不安定さによるところが大きい。彼には過去に犯した罪による、大きなトラウマがあった・・・。

豊は幼い頃、生まれ持った暴力性と権力に任せるままに、太一に対する肉体的精神的陵辱を行った。結果、太一と曜子の復讐を受けた。
それでもかろうじて生き残った豊。だけどそのトラウマに耐え切れず、無意識的に記憶喪失となり生き続けるのだった・・・。

しかし、それも太一との再開で無に帰す。最初はお互いが何者か分からなかった二人だが、いずれそれに気付いた太一によって豊の罪は蒸し返されたのだ。
結果、罪悪感に押し潰された彼は自殺してしまう・・・。

そんな新川豊の人生とは・・・。
征服者として太一と出会い、親友として再会し、その親友に罪人として殺された、そんな最悪の結末である。
だけどその中でも確かに太一との楽しい交流があったから、豊にも少しばかりは人間らしい幸せがあったと言えるかもしれない・・・。




<私的データ>
男前 明るい ナイス 思慮深い 楽観的 ライト 好き 鮮烈 熱すぎる 弟子にしてくれ





























容姿 性格 ユーモア 洞察 思考 好感度 存在感 燃え度 信奉率















別に… 暗い 寒い 浅い 悲観的 ダーク 嫌い 希薄 冷え切っている 勝手にしてくれ





独自調査と思い込みによる詳細

 概要 説明
容姿 爽やかを地で行く風貌。片足が不自由。 見かけスポーツ系で、アウトドア社交系。男を近付けない美少女・佐倉霧などからも、何気に好かれるナイスガイ。
だけどそのガイぶりは、文字通り豊の外面に過ぎなかった。
彼の内面は○チガイ・・・。
性格 気配りを知る男。苦労した人間だけが醸し出せる笑顔を持つ男。 だけどその過去はいじめっ子。本性は両刀使いのサディスト。太一はその変態性に何度となく苦渋を舐めた・・・。
そして、その記憶を持っている限り自我を保てないと確信した豊は、記憶喪失という逃げ道を作ることによって、強制的に本性を押さえ込んだ。
それが太一にとって許し難き背信行為以外の何者でもないと気付くことも無く・・・。
そんな豊は、ある意味アブナいお兄さん・・・。
言動 気の合う太一と常につるむ 馬鹿でエロくて、それに臆することもなく、たまにバームクーヘンの皮を剥き始めたりする変わり者だけど・・・。
それだけに、太一にとってはまさに格好の遊び相手。
だけど、それがいずれは太一の憎悪の標的となることを、豊は知る由も無かった・・・。
豊はある意味、幸せな男・・・。
趣味 寝る。だらだらと過ごす。ひたすら野球盤で遊ぶ 決して寝たいわけではないけれど、何処でも何時でもすぐ落ちる。それは記憶喪失の後遺症という噂もあるが・・・。
あとはのんびりと学生生活を満喫するだけの普通人。たまに野球部に顔を出し、野球盤で内に篭って遊んだりと・・・。
そんな変わり者の名は新川豊・・・。
特技 早寝。エロ画像収集 のび太に匹敵する落ち具合。それでいて精力旺盛なイケメンは、まちこ先生に欲情するも、姪である佐倉霧には1ミリたりとて欲情しなかった。
そんな彼は、ある意味不能なナイスガイ・・・。
 

 

 


許されなかった過去の罪。だけど忘れられない心の友・・・




溢れるセンス。冴えわたる機転。
奇想天外な太一の物言いや行動に怯むことも無く、その毒を受け流しながら時には返すことも出来た。
そこには爽やかな笑顔と、そして裏をかかない優しさが満ち溢れる・・・。

その存在感は容易に霧散しない。
彼の名は心に刻まれて止まない。
太一の気まぐれ、逸脱した思考や言動に付いて行けた貴重な男として、
太一のフィールドに踏み込むことの出来た猛者として、
気の合う友人として・・・。

それは親友。
桜庭浩とはまた違う、確かな手応えを得た相手。
新川豊は、太一の思い出の中に親友として生きていた・・・。



だけど同時に、彼は最も罪深い者として認識されていた。
太一の攻撃衝動を満たす生贄として、新川豊は標的を定められていた・・・。

攻撃の対象は、爽やかな笑顔を覗かせる親友としての豊に対してでは無く、過去の豊に対して。
さらに言うのなら、記憶喪失という都合の良い材料を引き出して自分の犯した大罪を忘れ去り、現実から逃げ出した豊に対しての攻撃性である。
太一は、罪人としての業を背負わず、本来果たすべき罪人としての義務を放棄して生きて来た、そんな気楽な豊が許せない。苦しむままに生き続けた結果壊れに壊れてしまった今の自分と余りにも対象的な、追い詰められていない豊が納得出来なかったのだ・・・。



同じ立場でありながら、
同じ時間を歩んだくせに、


まるで違っていた二人の現在・・・。



背負ってこそ十字架だと信じ続けた自分を置き去りに、
それを跳ね返すために欺瞞と共に生きるしかなかった滑稽な自分の目の前で、


幸せそうに笑う奴・・・。



太一はそんな豊を受け入れることが出来なかった。
不幸に喘いでいるのならまだしも、幸せを振りまいていただけに、許せなかったのである・・・。



それは、もしかすると羨望だったのかもしれない。
手に入れられないものを手に入れてた奴だから自ら近付いたし、無意識に惹かれていたのだとも取れるだろう。
自分が望む自分に近付くために、豊は不可欠な存在だったのだと・・・。

だけど、陰湿な過去の記憶がそれを否定したから。
現在の豊の笑顔は、太一の化け物としての本性を発動させるほどに満ち足りたものだったから・・・。
太一は無意識の内に豊を追い込む。二人の関係は修復不可能となる。
結果・・・

豊は自殺した。
そして太一は、その穴を埋める存在を見つけられぬまま今後を過ごすのである。

親友だったはずの二人が迎えた悲しい結末。
必ずしも望んだわけでは無い、だけど止められなかった結末だった・・・。









そんな彼等の不幸は、どこから始まったのか。
偶然なのか、それとも必然なのか。
二人の馴れ初め。それは暑さ激しい夏の日のこと・・・。



足が不自由な豊と、彼にぶつかり転倒させてしまった太一。
とりあえず怒鳴ってみたけれど、松葉杖をつきながらもまるでめげない豊の強さは好感度抜群で、そのセンスは予想を越えて太一好み。豊という男は、容易く太一の心を捉える。
二人は瞬く間に親友となっていた・・・。

こうしてしばらく交わされた交流。適当に馬鹿を言い合い、自然につるんでいた時間。
そこに不快は無く、穿った気遣いも特に無い。
不幸の始まりは、ここには微塵も無かった。
それは、互いが最も幸福に近付けた時間だったのかもしれないのだから・・・。

だけどある時、太一は思い出す。
遥か過去、人里離れた豪華な屋敷に養われていた頃。人として扱われなかった苦痛と苦渋の日々を。
その屋敷で自分を肉欲の対象とし、奴隷として扱い、虐げ続け痛め抜いた、一人の変態少年について・・・。
そして太一は告げる。記憶喪失で都合良く過去を忘れているのん気な豊に。
その変態少年とは、まさに他ならぬ豊本人だったという事実を・・・。

後は、罪の意識に苛まれた豊の背中を押すだけ。
絶望しつつも許しを請う彼を、冷静に突き放すだけで事足りる。
人の心を喰らうことに悦びを見出す太一は、豊に対し、ただ一言だけ投げ掛けるだけだった。
「どうして今すぐ死なないんだ?」と・・・。

晴れた空の下。
群青学院屋上。
一人の飛び降り自殺者が完成した瞬間だった・・・。


それは二人で築き上げた楽しい思い出の終止符であり、二人の暗い因縁の決着とも言える。
だけど、どちらでも同じことだろう。
忘れたはずの記憶、忘れたかった過去の罪は心の痛みと共に蘇った。
築き上げた親交、培った友情は、跡形も無く消え失せた。
その事実に変わりは無いのだから・・・。

そしてもう一つ、決定的な真実・・・。


彼が戻ることは二度と無いということも・・・




これが多分、二人の不幸の始まり。
だけどそれは、望んだ自分を手に入れる為の素材を失った太一にとっての不幸であり、豊のものでは決して無いだろう。
むしろ彼にとっては不幸の終わりで、もしかすると幸福の始まりだったのかもしれない。
死ぬことによって、全ての苦しみから解放されたのだから・・・。

そんな豊の不幸とは、ずっと昔から始まっていた。
幼い頃、太一と出会ったことこそが豊の不幸の始まりである。
彼はその出会いを機会に狂い、壊れ、後に決定的な死を突き付けられるのだが・・・。
もはやそれは逃れられない宿命だったのかもしれなかった。

その出発点としての、遥か昔の出来事・・・。
豊は太一を虐待し続けた。
変人の気質を持つ親に感化されて始めた豊だけど、やられた本人である太一にとっては関係無い。報復するに十分な理由であり、そこに咎めは存在しない。
だから太一は、同じく虐待されていた曜子と手を組み復讐を図る。そして豊を含め、敵を全員殺戮した・・・。
それでも豊は運良く生き延びることが出来た。だけど悲しいかな、結局は太一の前に姿を現してしまうのだ。
奇しくも、同じ群青学院生として・・・。
運命だと言わんばかりに・・・。

この運命を回避する可能性はいくつもあった。
豊が太一の住む屋敷に来なければ、豊が太一を苛めなければ、常人であったなら、群青学院に訪れなければ・・・。

だけど、多分それは適わない。
生活能力の無い当時の豊は、親に付いて行く以外に無かったから。元々いじめっ子だった豊だけに、その特性を存分に発揮出来る空間を与えられて大人しくするはずが無かったからである。
しかも、そんな豊の特性を咎め教育するべき立場である父親からして既に狂気。修正どころか豊の乱行を賞賛する始末。
そんな親の下だから、真っ当な自我を確立する道がある筈も無く・・・、
子供を正気に導く大人が居ないから、豊がやり直す術は無く・・・、
後はヒートアップするのみ。行き着くところまで行くのみであった・・・。
そして行き着いた先、群青学園。
まさに因果応報。運命の修正、極めて困難・・・。

それでも彼は、一応そこに修正を加えようとしてはいた。
記憶喪失というファクターがそれである。
豊は過去の記憶を意図的に封印させることによって、昔犯した自分の罪をきれいさっぱりと忘れることにした。
これからの未来を少しでも幸せのベクトルに方向修正するために・・・。
だけどそれもささやかな抵抗でしか無いわけで、群青への道は変わらず濃厚に違いない。
幼少時の残虐性を持ったまま成長すれば、行く末は危険人物。群青確定である。
そして、その性癖を何とか記憶喪失によって封印しても、精神は不安定。やはり群青確定となるのだ。
結局、狂気のままで居ても、記憶を無くしたままでも、どの道正常は保てなかったのである。
つまり、彼の心は壊れる運命。
いや。もしかすると、最初から壊れていたのかもしれない・・・。

だけど、そんな壊れ果てた豊を救ったものもあるだろう。
それが太一との出会いであり、彼と共有する時間。
その時間だけは、豊は正体の見えない過去への不安から逃れられた。
このまま何も知らないまま過ごせれば、豊は幸せであり続けたに違いなかった。

しかし、運命の皮肉はそれを許さない。
太一は豊の中に封印された闇の部分を見逃さない。
豊は、生来の極悪さと、だけどその後の苦労で得た逞しさを拠り所に生きて来た強者。しかしながら、太一という桁違いの怪物の前には赤子同然である。

太一という異常者の狂気に向き合えた豊。
それは彼の強靱さゆえであり、柔軟さゆえでもあるだろう。
本質的には、豊が太一と同じく狂人だったからとも言えるかもしれない。
新川豊は、根本にその異常性があったからこそ、人の心を喰らう太一の衝動から長期に渡って逃れることが出来たのだと・・・。

それでもレベルが違っていた。
「どうして今すぐにでも死なないんだ?」という言葉。死ねとも言わず、許すとも違うその科白は、豊の予想を越えたものだった。
大して怒ってもいないのに、殺意はそれほど抱いていないのに、最悪の言葉を平然と投げ掛ける。
別の言葉を使えば最悪の展開は免れたはずなのに、豊が最も追い込まれる手段を無意識に取れる。
それも、ただの好奇心から・・・。

これが太一の常人とは違う理由。
適応係数80オーバーの根拠・・・。
太一は人よりも何よりも、全てに先んじて自分の好奇心を優先させる。
そこから予想される結果や、新たに生じる波紋を考えることも無く、考えたとしてもそれが自分の欲求を超えることは決して無い。たとえ、その先に破滅があろうとも・・・。
太一はただ、豊を突付きたかっただけ。おもちゃを弄るようにふと突付き、それに豊は崩されたのだ。
逸脱し過ぎた太一だけに、逸脱し過ぎない豊には対抗する術が無い・・・。

ほんの少し気配りがあれば豊が死ぬこともなく、二人の未来は続いていただろう。
「どうすれば許してくれる?」と口にした豊に対して怒るも良し、殴るも良し。償いをさせるも良し。
そして過去のことだからと、大らかに許すのも良し。
とにかく、死を免れる選択肢は無数にあった。
そして豊ならば、どう転んでもそれなりの返しが出来るはずだった。

だけど太一が吐いたのは、最も残酷な問い。
「どうして今すぐ死なない?」というダメージ特大の脅迫。
それは豊を殺せる唯一の策。太一が強要するのではなく、豊が進んで死亡する結末を導くために用意された、巧妙過ぎる罠。そんな台詞を太一は口にした。
最も的確で効果的で、それ以外にありえないという絶対性を持った言葉を。
多分無意識に・・・。

そういうわけで、最後の最後で太一は豊の予想を裏切った。
結局、新川豊もまた、黒須太一の理解者にはなれなかったのである。
他の全ての人間と同じく・・・。


それでも豊は、理解者として最も近付けた人間だったのかもしれない。
彼は太一に共通するものを数多く持っていたから・・・。
感性は勿論のこと、暗い過去を持っていること、それによって心が壊れてしまったこと、等々・・・。
それを踏まえて確かに言える事は、壊した者、壊された者の違いはあれど、両者共に狂人同士だったことである。豊が狂人としてもう少し強ければ、二人は何とかやっていけたかもしれないのである・・・。

だけど決定的に違うものが二つ・・・。
一つ。豊はそこから蘇生した。記憶を封印することによって・・・。
逆に太一は未だに蘇生出来ない。同時に二度とは戻れない・・・。

そしてもう一つ、決定的な違い。
豊は幸せになっていた。忘れるという最も楽な方法で、太一が望んでも得られない幸せに浸っていたのだ。
豊の笑顔を見て、それを確信したから・・・。

太一は発動する、人を不幸に陥れる言葉を。
人間では無い者として・・・。
豊は耐え切れない。
人間になってしまったが故に・・・。


本当は、太一は許してやることが出来た。並みの人間としての感情があるならば。
また、豊は回避することが出来た。狂気に身を置いていた感性が残っていたのならば・・・。
致命的なのは、ただ豊がいいやつになってしまったこと。
死を回避出来る最後のチャンスを活用出来なかったこと。
最後の一線で常軌を逸すことが出来なかった豊は、弱くなっていたのである。
それはある意味、豊が犯した最後の罪だったのかもしれなかった・・・。

凡人に興味を示さない太一の性格を熟知しつつも、
模範解答など求めない太一の本質をその身で理解しつつも、
最後の最後で素に戻る・・・。
人の心を喰らい尽くすのを悦びとする化け物の前で、
人でない太一という生き物を目の前にして、
豊は普通の人間に戻ってしまったのだ。
未だ狂気の中を歩き続ける太一を置き去りにして・・・。

ただの人間だから、太一も容赦しない。
人を人とも思わぬ太一は、思い出から構築される人間関係など一瞬で無に出来る。
そんな彼にかかれば、新川豊という親しい人間ですら犠牲の羊なのである。
豊は、太一にとって暇つぶしの一つに成り下がったのである・・・。

交わらない二人の相違点、救えない結末がここにあった・・・。




だけど、それでも失ってはならない存在だったはずである。
豊は太一と自然と接することが出来る数少ない人間であり、望んで接したいと思える相手。
利害は一致していたはずなのだ。
気の合う人間と時間を共有するのが人間で、そうした方が自分にとっても有意義だと知っているから。少しでも無為を埋め、渇きを癒したいから近付いたはずなのだ。
自分の存在意義が失望と後悔で塗り潰されてしまう時間から少しでも逃れる為に・・・。
そんな、お互いが望むままにつるむ現象。精神異常者である太一ですら例外では無くて・・・。
誰よりも救いが無いのは、それを自分の好奇心だけで打ち壊せる太一かもしれなかった。

それは太一も知っていること。
涙は出ない。心は別に痛まない。豊の死に対して責任を負う必要も無く、また負う気もさらさら無い。
そう思う時点で既に終わっているのだと、自分自身が一番良く分かっているのだろう。

だけどもう一つ、それよりも遥かに重要なことを太一は知っていた。
それは、豊が太一の可能性を最も広げてくれる存在だという確信。
豊と居れば、太一はその可能性の最短距離を見出せたはずである。
他の誰と居るよりも早く・・・。


それは、太一が常に思い続けたもの。
心の中で切望していた人間らしい願い。


ハッピーエンドという可能性・・・。


豊が生きていれば、もっと近付けたはずだった・・・。




しかし、そのキーパーソンはもはやこの世に存在せず・・・。
残されたのは、ループする世界と、ただいがみ合うだけの8人。
迎えるのは、救えない結末ばかり・・・。

それでも太一は、その結末を何とか変えようとして足掻ていた。
最も高い可能性を自分で切り離しながら、最も低い可能性を追い求めた。

時折、豊のことを振り返りながら・・・。











一年前の夏―
蝉が鳴き、人が行き交い、世界が生きていた頃。
そして、太一の人間としての心が少しずつ動き始めた頃・・・。

出会った。
新川豊に・・・

愛すべきセンスと、太一好みの弾けぶりを見せながら。
松葉杖でぎこちなく歩くその足に、心の痛みをちらつかせながら。
だけど、その痛ましさを忘れるほどに悠然と、穏やかに。
優しい笑顔に忌々しい過去を全て封印するかのように・・・。

その屈託の無さは太一の好感を獲得するに充分で、でも同時に最大級の悪意も呼び寄せるもので・・・。
太一の心を壊した張本人は、彼の目の前で幸福に満ち足りた笑顔を見せる。
そして結果、再び心を壊され自殺する・・・。


そんな、偶然とも思えるし必然とも言えた出会いと別れだけど・・・。


豊との思い出は、太一がこれから独りで過ごす時、力になってくれるだろうか?
生きていく糧になるのだろうか?
懐かしみと喜びを以って振り返ることの出来る、良質の記憶だろうか・・・?


それは誰にも分からない。
太一にも、完全には分からないはず・・・。


しかし、分かることが一つ。
過去は変えられないもの。そこにあった真実は改ざん出来ないということである。
故に、豊の罪は永遠に消えない。
そして、太一の罪もまた消えない。
だから結局、二人はお互い様だったというだけのことだろう・・・。

故に太一は「食らい合っていた」と表現するのみ。
「どちらも悪くなかった」と悟り切るのみ。
その思い出には良質も悪質も関係無かった・・・。


それでも豊との思い出は、太一の記憶に色濃く残って離れない。
彼は太一を人であらしめた要素であり、太一が自分から歩み寄った人間だから。
たとえ短い時間でも、楽しい時間がそこにはあったから。


新川豊は、確かに親友だったのだから・・・。



たとえ多くの罪があったとしても、あの時間を否定することは出来ない。
絶望が待っていたとしても、出会わない方が良かったなどとは思わない。

豊のあの笑顔は、未だ強烈に残り続けていた・・・



その笑顔が良質な思い出に繋がる道標だと太一は知っている。
追い続けたもの、望んだ結末へ至る道に対する答え。その一つとして、新川豊との時間は太一に肯定されている・・・。

だから太一は頑張れる。
ハッピーエンドを目指す彼で居続ける限り・・・。

そしていつでも思い出せる。
そのハッピーエンドへの可能性は、あの親友の中にも確かにあったのだから・・・。








太一にとっての固有の人生。
今でもなお残り続ける、数少ない良質の思い出達・・・。

それは、自分に心を開いてくれた数少ない人達との交流の中に・・・。


そして・・・、





屈託無い笑顔を覗かせた、あいつとの時間の中に・・・