(c)さくらねこ
式守紗空<なつかげ(さくらねこ)>
評点:6  属性:巫女さん

「世間知らずな巫女さんは、まんまと主人公の毒牙に汚されました」


彼女はなつかげにおいて、別天地で出会うヒロイン。
朝香勇人が夏休みを利用して出掛けた旅行にて、2週間ほど田舎町の別荘に居を構えている最中にふと出会った女学生であります。
紗空はその時、談笑する他の女学生に交じりながらも、独り物憂げな表情を称えていました。
同世代であるにも関わらず、何か浮いた存在でありました。
聞けば会話が噛み合わないとのことです。

孤独であるということ。
それは不安定な思春期において、かなり凹む事実だったに違いありません。
何かと話題が合わず、恋愛話にも花が咲かず、紗空はいつも辛そうに登下校しているのです。

そんな彼女はいわゆる物知らず、その根底として世間知らずであります。
この田舎町から一歩も出ない紗空は、しなびた商店街を総合デパートのように位置付け、ここで手に入らないものは何も無いと豪語します。
およそ通常の子供時代を過ごした人間ならば知っていそうな話題も、まるで通じません。
式守紗空に足りなかったのは、ただ知識だけだった。
器量が良いだけに惜しいと言わざるを得ませんでした・・・。


だけどそんな紗空にも、人に誇れるものが一つだけあります。
それが自分が神々と人々を繋ぐ役割である、巫女という地位。
幼い頃から巫女として育てられ、世間知らずな少女に陥ることが運命であったとしても、彼女はこの巫女であることに絶望はしていません。

それは紗空にとって唯一人に勝るものであり、他人と自分を分かつ特性であったからです。
毎年行われる恒例の夏祭り。幼少の頃から鍛えられた彼女の舞は、見るものを魅了しました。

紗空の舞う姿は、確かに神聖なもの・・・


万能そうな見かけと裏腹な素朴さに惹かれた勇人は、その舞に見とれ、益々彼女の虜となります。
そして何も知らないことをいいことに、彼女をその毒牙にかけるのでした。


そして紗空もお年頃。
無知なりにも尽きぬ本能。
当然のように抱く、異性への興味。

後は意のまま為すがまま・・・


なかなか面白い展開でありました・・・。


あとは平凡極まりない主人公・勇人の虜。
結婚の約束など子供じみたことを行いつつ、初めて感じた甘い感覚に浸ります。
いずれ勇人は都会に帰り、別れが待っていると分かっているのにも関わらず。

今だけはせめて・・・



そんな切なかった一夏の思い出。
だけど一夏の思い出で終わることなく、二人は遠距離恋愛で心を繋ぎ止めることを選びます。
勇人はメールも知らない紗空に手紙を書き続けました・・・。
だけど紗空からは何の返事も来ることなく、時間だけが過ぎて行き・・・。



ある日。
諦めず便りを出しつつも、半ば絶望しかける勇人。
やはり一時の気まぐれに過ぎなかったのかと、でもあの紗空の笑顔は忘れることは出来なくて・・・。

そんな勇人の家のドア。
チャイムの音が鳴り響く・・・。

失意のまま面倒臭そうな勇人ですが、来訪者の顔を見れば・・・・


そこにあるのは、まるで田舎から引っ越して来たと言わんばかりの大荷物と、
私服姿の式守紗空と、

忘れはしない、彼女の笑顔・・・


勇人の顔も、自然と綻びました・・・。


父親の反対を押し切り、勇人の家にまで出向いた式守紗空。
押しかけ女房・式守紗空。
あの時交わした結婚の約束に時効など無く、彼女は朝香勇人の女房・朝香紗空としてやる気満々。
ある意味最強のバカップル。
どこかズレた片田舎の巫女さんは、都会に来ても相変わらずズレていたけど・・・。

だからこそ、そこが愛らしい。
故に変わらず愛したい・・・。


勇人はドアを開け、紗空を迎える。
今は居候として。
でもいずれは自分の奥さんとして。
そう願いながら・・・。






片田舎で式守紗空と出会い、
大都会で式守紗空と再会して幕を閉じた、


そんな夏の思い出のこと・・・