あらすじ?展開?
無気力人間・春野明生。
何事にも無関心、無感動。クラスメートの女の子に苛められてもさして気にしない。
「昔はこんなヤツじゃなかったのに・・・」
何処からともなく聞こえるそんな言葉。
「俺達はずっと友達だ」
昔、誰かと交わした大切な誓い・・・。
公園で出会った少女・夏森永久は、そんな明生の心の中を見透かすように、彼の前でにこやかに微笑んでいた。
まるで再会を懐かしむように。それが当たり前だと言うように・・・。
明生の住む町には、かつて「さとり」と呼ばれ、人の心を操る化け物が居た。
それは明生にとって、何故か懐かしい昔話。
でも何故か心に痛い昔話。
遥か昔から存在した「さとりの里」の伝承は、今も尚語り継がれている・・・。
感想?批評?
「『てのひらを、たいように』・・・」
「上質では無いが、懐かさの溢れる柔かい絵・・・郷愁を誘う音の調べ・・・」
「決して悪くない。いや、むしろ好感を持てるのではないだろうか・・・」
「そして煌びやかでは無いが、素朴で・・・そして余りに一途な想いが詰まった物語・・・」
「その終始変わらない姿勢で臨む人達の物語は、それをする者の心にきっと何かの感情を芽生えさせてくれる」
「それは、忘れかけた純粋さと言ってもいいだろう・・・」
「何故ならこの作品では、終始呪詛のように謳い続けている命題があるからだ」
「それが『友情の大切さ』と、そして『約束の重さ』・・・」
「主人公の少年も、彼を取り巻く少女達も皆一様に言っている」
「『何があっても俺達は大切な友達だ』と・・・」
「彼等ももう世間の厳しさが分かって来る年頃だろうに・・・なのに誓った友情を信じて疑わない。それは只事では無い・・・。だから、そんな稚拙ながらも純粋な姿勢は、きっと人々の心を打つに足る」
「まさに兜を脱ぐ天晴れさだ・・・。これを創作した人間に惜しみない拍手を送りたい・・・」
「それにしても、この少年達・・・。裏の無い友情劇を貫徹する困難さは、ともすれば真理に到達する所業に匹敵するというのに・・・」
「それでも真っ直ぐに、『世界よりも友情の方が大切だ』と確信するのか・・・」
「僕より年下の人間が・・・そう、言い切るのか・・・・」
「その信じる力と困難に立ち向かう力・・・どちらも僕には無いもの」
「出来うるなら僕も、あんな人間になりたかった・・・」
「でも、志朗さんだってとても優しくて頼りになる人ですよ?」
「う・・・。そう言ってくれるのは有り難いんだが、僕と『てのひら』の人達とでは根本的なところで違うんだよ、朝奈ちゃん・・・」
「どうしてですか? 主人公の『明生』っていう方は確かに子供の頃の約束を信じて突き進む芯の強い人ですけど、志朗さんも私との約束をいつも守ってくれてる誠実な人だと思います・・・。」
「そ、そうだろうか・・・」
「そ、それに・・・・その、格好いいところも同じですし・・・」
「あ・・・いや、それは・・・」
「ふふふ、志朗さんとこの明生って人は同じですね。いつも自分のことを顧みずに誰かを助けてくれる。 そんな明生さんが活躍する『てのひらを、たいように』だから人の心に残るし、そんな志朗さんだから皆が頼りにするんですよ」
「あ、ありがとう。そう言って貰えると気が楽になるよ・・・。 『てのひら』をプレイして、ちょっと自分に恥じ入りすぎたかもしれないね」
「志朗さんをそんなにさせちゃう『てのひら』って、よっぽどなんですね」
「ああ、そうだね・・・。とにかくこのゲームは最初から人を魅了する何かを持っている。終わりに近付いてからやっと盛り上がるゲームが多い最近だけに新鮮だったよ。まさか一太刀目でこれほど心揺さぶられるとは思わなかった」
「最近のゲームは中々盛り上がらないんですか?」
「ああ。何でも収束型とか言う戦術が物語に施されるのが流行っているようで、それは全てやり尽くさなければ謎が解けないという大変面倒臭い代物なんだ。そんな作品は大抵何回目までかは意味不明・・・」
「初めが駄目ならプレイヤーは投げ出しちゃうんじゃないですか?」
「そうならないのが収束型の狡猾なところさ。少しずつ謎が解けるから、ユーザーとしては、どうしても先が知りたくなる。その心理を突いて巧みに、そして緩やかに解答を提供してユーザーを導いて行くんだ。まあ正々堂々とはちょっと離れているかもしれない。本来物語というのは一話完結。そこにこそ真実があるはずだからね・・・。」
「うーん、なるほど・・・」
「昔の人は言ったよ。『はじめよければ終わりよし、真ん中よければさらによし、終わりよければ全てよし』とね・・・。」
「じゃあその収束型は、始めが悪くて真ん中で少しずつ良くなってきて、それで最後がとても良いという感じですか?」
「うん。それが王道だね」
「それと違って『てのひら』は、始めが良くて、真ん中も良くて、終わりはすごく良いということですね♪」
「うーん・・・。あながち間違いでは無いが・・・」
「え?最初だけだったんですか?」
「いや、それは流石に無い。 無いが、何となく最後の締めのあたりがね・・・」
「それはつまり、前半で力を出しすぎちゃったから後半が弛んでしまったということでしょか?」
「まあ言ってみればそんな感じになる。何故なら『てのひら』は、主人公・春野明生とヒロイン・夏森永久を中心に世界を回してこそ最も輝くはずなのだから・・・」
「永久ちゃんというと、正ヒロインにしてあらゆる事件に関わる女の子ですね。その子が最後は目立たなかったというわけですか」
「そう・・・。永久と言えば、全ての鍵を握る少女。そもそも物語の伏線は主人公の幼少時代から既に始まっており、その時にも永久は居たんだ。 その彼女が『約束』を守り、時を経て明生に会いに来るところで全ての人物が動き出す。彼女はこの作品の謎と、そして重要語彙である『友達』、『約束』という言葉を全て体現する少女。だからひと時なりとも欠かしてはならないはずなんだよ・・・。 なのに彼女は途中で出番が大いに減少してしまった・・・。 そこが有終の美を飾れない所以なんだよ」
「どうなっちゃうんでしょう?」
「まあ、それはやれば分かる。ただ言えることは、永久という少女が絡む物語はみんな面白いってことさ」
「ほんとに重要な子だったんですね、永久ちゃん・・・」
「ああ。 彼女が居ればこそ、この純粋な物語が成り立つと言っても過言ではない。永久の存在はまさに題名通り、太陽のような存在だ。明生を始めとする人々は皆、彼女の魅力にただならぬ熱気を爆発させていたなぁ・・・」
「う、なんか嫉妬しちゃいますね・・・。私も少しは志朗さんの心に入ることが出来ればいいのに・・・」
「何を言ってるんだい・・・? 朝奈ちゃんはいつでも僕のことを支えてくれてるじゃないか。それこそ永久に負けないぐらいの微笑みで・・・。そう、君も彼女と同じく太陽のような子なんだよ・・・?」
「そ、そんな。お世辞を言わないで下さい」
「いや、僕には分かる。君の魅力が・・・。故に明生達が永久という少女を大切にした理由も良く分かるんだ・・・。 君には分からないかい?」
「分かりません。私、馬鹿だから・・・」
「じゃあ教えてあげる。それはね、僕が君のこと愛しているからだよ・・・」
「えっ・・・?」
「離れたくないんだ・・・。離したくないんだ・・・。 暖かな微笑みはそこにあるだけで人を癒してくれるものだから・・・。」
「し、志朗さん・・・」
「明生の場合も同じだよ・・・。 大好きな永久を守る為なら、たとえ町の人間全てを敵に回しても怖くない。命なんて惜しくない。 そんな明生の気持ちは、僕には痛いほど分かったんだ。 何故なら彼女は、明生達にとって何よりも愛すべき友達なんだから・・・。そう約束したんだから・・・。 それなら分かるだろ?」
「は、はい・・・」
「要するに、大切なものを守る為に理由なんて要らないんだよ。大切だというだけで理由になるんだよ・・・。」
「そうですか。永久って子は幸せですね。そんなにも皆に愛されて・・・」
「そうだね。『てのひら』というゲームは、結局この永久に始まり永久に終わる。彼女の愛情溢れる魅力が無ければ決して語れないものなんだろう。 いとおしくて、守ってあげたくて・・・。 そうすれば自分達は幸せになれる。何より永久自身が幸せになれる。 それはつまり皆の幸せで、その象徴がつまり夏森永久なんだよ・・・」
「そんな子に私もなれたらいいな・・・・」
「何を言ってるんだ朝奈ちゃん。君だって同じくらい素敵だって言ったでしょ? 聞こえなかったとでも言うのかい?」
「い、いえ。そんなことはないですけど、やっぱり私なんかがそんな素敵な子だなんてとても信じれません・・・」
「全く・・・。 さっき、『明生のような人間になりたい』と自己嫌悪に陥る僕に、君は言ったね?『志朗さんも同じだ』と・・・」
「ええ、だって志朗さんが素敵な人なのは本当のことだから・・・、あっ!?」
「その言葉をそのまま君に返すよ・・・。君は永久と同じく、可愛くて、守ってあげたい、大切な大切な人だ・・・」
「し、志朗さん・・・そんな、私・・・」
「素直になっていいんだ。君が気付かないだけなんだ・・・。 いつだって君は、側に居る人達を癒してくれた。その明るさで、その天使のような笑顔で・・・。だから僕も君の事をこんなに愛しく思ってるんだよ」
「あ、ありがとうございます志朗さん。嬉しいです・・・」
「ふふふ・・・やっぱり僕達は似た者同士かも知れないね? お互いに謙遜し、でも側に居る人はその魅力にすぐに気付いてしまう。そしていつの間にか、勝手に人々の本能を魅了してしまうんだ。 まるで『てのひらを、たいように』のように・・・。春野明生と夏森永久のように・・・」
「そうかもしれませんね。うふふ・・・」
「そういうわけで、これからもよろしく頼むよ。 その笑顔を佐々井亭を訪れる多くの人達の為に・・・」
「はいっ♪」
「でも、夜はその可愛い笑顔を僕だけの為に・・・・・・・ね?」
「も、もう〜、志朗さんったら・・・」
「ふふふ、朝奈ちゃんは相変わらず可愛いね・・・。もう我慢できないよ・・・」
「そ、そんな、志朗さん・・・」
「相変わらず囀ってるようですね、志朗さん・・・」
「お、お姉ちゃん・・・!」
「げっ、夕奈さん!こ、これはそのっ・・・!」
「いいんですのよ志朗さん。別に私は何とも思ってませんから・・・。二人はお似合い。さっき自分達で言ってたじゃありませんか?」
「ゆ、夕奈さん・・・」
「今の話を聞いて、確信しましたわ。やっぱり朝奈と志朗さんは似た者同士。 ゲームなんて茶番劇に陶酔して、青臭い友情や愛情を信じ、砂のように脆く頼りない約束なんかに幻想を抱いてる堕落者ということが・・・」
「ち、違うよお姉ちゃん!『てのひらを、たいように』は、ほんとに感激するお話なんだからっ!」
「感激して何が変わるというの?お涙頂戴の臭い友情劇の過程だけ見て、それで自分の結果まで変わった気になってるの?それをぬか喜びと言うのよ」
「ぐっ・・!」
「何を言うんです! 幼い頃の約束を立派に守る主人公、男らしいじゃないですか? 一度は完全に忘れられてしまったににも関わらず、昔の拙い約束だけを頼りに挫けず微笑み続けた少女・永久、健気じゃないですか? それが汚れ切ってしまった心を洗い流すんです!だから涙を誘うんです!そして最後は皆で幸せになって微笑むんですよっ!! 夕奈さんにはその浪漫が理解出来ないんですか?」
「浪漫だけで生きていけるのかしら? 志朗さんって案外世間知らずなんですね」
「なっ・・・!」
「それに志朗さん。あなたの口から『皆が幸せ』なんて言葉が出るなんて・・・。おめでた過ぎるにも程があるわ・・・」
「何だって・・・?」
「志朗さんはさも不幸な人間が消えたみたいなことを言ってるけど、明生という少年を取り巻く人達が幸せになった裏で、どれだけの人間が不幸になったか・・・。それを考えたことがあるの?」
「な、何を言い出すんだ君は・・・?」
「例えばその永久って子・・・。昔の友達と仲良しこよしになれて、しかも明生って男と一緒になれてさぞかし幸せでしょう。 けど、彼女が明生と結ばれた後、他の子はどうなるのかしら?」
「そ、それは・・・」
「穂と・・・、美花って言ったかしら?彼女達もまた明生のことを愛しているのよ? 永久が明生とくっついてしまえば、他の二人は必然的に不幸になるわよねぇ・・・?」
「ぐっ・・・」
「志朗さんのような人を夢想家って言うんですよ?」
「それは違うよ、お姉ちゃんっ!!」
「なんですって・・・」
「普通はそうかもしれないけど・・・この『てのひら』の人達はそんなもの関係ない所、もっと高い理想の場所に居るの・・・」
「高い理想ですって? 大きく出るじゃない朝奈・・・?」
「だってそれが本当のことだもん・・・。 彼等は仲間割れとか嫉妬とか、そんな感情では動かされない人達なの。奪い取ろうとかそんなんじゃ無いんだよ・・・。皆が明生さんのことが好きで、でも他の女の子同士も同じくらい好きだから・・・。彼女達にすれば、明生さんが幸せになるのが自分にとっても一番幸せって思ってるから・・・。笑って身を引くことが出来ると思うの・・・!」
「そんな自己陶酔で好きな男を平気で譲るの? 好きな男を寝取られても仲良しこよしのままで? ハンッ!とんだ茶番劇ね。 虫唾が走るわっ・・・!」
「茶番なんかじゃないよ!本当にみんな、心からお互いの幸せを願ってるんだよ!!何で分かってくれないのっ!?」
「黙りなさい小娘っ!!!」
「!?」
「よくもぬけぬけと言ったわね、朝奈・・・」
「お、お姉ちゃん・・・」
「アンタに奪われた人間の気持ちが分かるのっ!? 裏切られた人間の気持ちが分かるって言うのっ!?ええっ!? 『てのひら』は見た目綺麗に描かれてるけど、永久の一族は過去に何人もの人間をあの世に送ってるのよ! その人達の悲しみと恨みがガキの友情だけで解決するなんて、そんな偽善がまかり通ると思ってるのっ!! 反吐が出るわっ!!」
「で、でも、永久ちゃんも明生さんも、一生懸命考えてたんだよ?友達を大切にしちゃいけないの?昔過ちを犯した人は、自分の幸せを願っちゃいけないの?大切な人達の為に祈ることも許されないの? そんなんじゃ誰も救われないよ・・・」
「くぅ〜っ!! 何が友達よっ! 何が好きな人の幸せよっ! そんなまやかしで着飾って、自分のことは棚に上げて・・・。ホント憎らしい子っ・・・!!」
「わたし、棚になんか上げてないよっ!」
「そうだ夕奈さん!!朝奈ちゃんは何も悪いことは言ってないぞ!! いい加減目を覚ますんだっ・・・!!」
「目を覚ませですって!? こ・・・この恥知らずっ!!!」
「な、何故っ・・・!?」
「朝奈っ!!お前、私から志朗さんを取ったじゃないっ!! あんたはそれで幸せかもしれないけど、私の幸せはどうしたの?どこへ行ったの? 言ってみなさいよ!ねぇっ!?」
「そ、それは・・・」
「志朗さんもよっ!! 朝奈ばっかり見つめて、私を全身全霊で拒否してっ! あなた、自分が朝奈が好きだって気持ちに自己満足しちゃって私のことは全然考えてないじゃない! 私なんか眼中に無いって、身体全体でアピールしてるじゃない! 私は志朗さんにとって何!? 私の恋心はどうしてくれるの!? 説明して下さい!さあっ!」
「ゆ、夕奈さん・・・それとこれとはまた違う・・・」
「違わないわよ!この裏切り者っ!!!」
「そうじゃない!そうじゃないんだ夕奈さん!! 確かに僕は君の想いに応えることが出来なかった。だけどそれで君に対する親愛が消えたわけじゃないだろ!? 君だって朝奈ちゃんを愛しているはずだろ!? だったら何があっても皆で仲良くやっていけるはずなんだ!三段論法なんだっ! この『てのひらを、たいように』の少年達のように、みんなでやり直そうじゃないかっ・・・!!」
「囀るなっ!! 馬鹿にするにも程があるわっ!!」
「そ、そんなお姉ちゃん、志朗さんの言うとおりだよ! いい? 私と志朗さん夫婦で仲良し!それを影で微笑ましく見守るお姉ちゃん! これで私達はずっと仲良しだよ!! ね、お姉ちゃん・・・♪」
「永遠に黙らせてあげようか、小娘〜っ・・・!!」
「あうっ・・・!ぢ、ぢろうざん、だずげで・・・」
「あ、朝奈ちゃん・・・!」
「そういうのを幻想って言うのよ! 人の気持ちがそんな茶番で誤魔化されると思ってるの!? 『てのひらを、たいように』も所詮まやかし! 皆に平等な太陽なんて無いってことをせいぜい悟るがいいわ・・・。 その為にまずは朝奈!あんたから闇に葬ってあげる!!」
「ぐ・・・おでえぢゃん、やべで・・・」
「い、いい加減にしてくれ夕奈さんっ!」
「これじゃ全然レビューが進まないでしょうがっ・・・!!」
「ぐぅ・・・!」
「お、お姉ちゃん・・・!!」
「ハッ!?こ、これは・・・。僕が・・・やったのか・・・?」
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「ぐすっ、お姉ちゃん・・・」
「これで分かったでしょ朝奈。何かを守る為には、それに立ちはだかる何かを壊さなければならない。志朗さんが今、私にしたように・・・。壊れない友情や永遠の約束なんて、所詮無いのよ・・・」
「ゆ、夕奈さん・・・僕は・・・」
「いいんです。これが二人が幸せになる最も良い方法なんですから。志朗さんは自分達の幸せのために最も正しい選択をした。それが普通なんです・・・」
「でも、僕は本当はこんな結果を望んでいたんじゃない。もっと別の方法があったはずなんだ・・・・」
「分かってます・・・。 私だって本当はなりたかった。『てのひら』の人達のように、好きな人の幸せを願える女に・・・。 本当は愛していた。朝奈と、志朗さんを・・・」
「それは、知ってます・・・」
「でも、やっぱりみんなが幸せになる方法なんて簡単には見つからないものね・・・。誰かが不幸になるのが世の常だもの・・・」
「でも、そうでない人達もきっといるはずです。そして今は荒んでしまった人も、もしかしたらそんな人達に戻れるかもしれません。昔は皆、この『てのひら』の主人公達のように、純粋だったはずなんですから」
「そうね・・・そうかもしれませんね・・・」
「『てのひらを、たいように』とは、そんな人達の中に微かに残る純粋さを引き出すためにこの世に生を受けた。僕は何となくそう思いますよ、夕奈さん」
「・・・・・・・・・・・・・・」
「大切な人と居るという、ただそれだけのことがどれだけ素敵なことか。その原点に戻るために・・・」
「ふふ・・・やっぱり志朗さんは甘いわね・・・。でも、とても優しい人・・・」
「みんなそうですよ、きっと。手をかざせば誰でも太陽の暖かさに気付くものですから・・・」
「そうですね、志朗さん・・・」
「ええ、夕奈さん・・・」
「朝奈、あなたには分かったかしら?」
「今はまだ分からない・・・。でも、きっと分かる為に頑張るよ。お姉ちゃんiみたいになれるように・・・」
「相変わらず馬鹿な子・・・。でも、そんな朝奈が好きよ?」
「ぐすっ、お姉ちゃん・・・」
「そんな馬鹿な朝奈に教えてあげる・・・。 朝奈、私の左手を取って。私はもう力が入らないから・・」
「こ、こう?」
「そう・・・。それであの朝陽に向かって私の左手を上げてみなさい?」
「う、うん・・・」
「夕奈さん。君は・・・・」
「これが、『てのひらを、たいように』の本当の意味・・・」
「えっ? ・・・えっ???」
「覚えておくのよ、朝奈・・・」
「あ、あの・・・お姉ちゃん・・・」
「じゃあさよなら朝奈・・・志朗さん・・・」
「お、お姉ちゃーーんっ・・・!!!」
「あれでは多分、分からないと思うけど・・・。とにかく安らかにお休み夕奈さん・・・」
後日―
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
「お姉ちゃん。あの時の意味、まだ分かりません・・・」
「・・・・・・まあ、そうだろうね」
「でも、いつかきっと分かりたいと思います・・・」
「そうだね、夕奈さんの為にも分からなくちゃ駄目だ。挫けたら駄目だ」
「はい・・・」
「それが分かれば、きっと幸せになれる。君も・・・そして僕も・・・」
「志朗さん・・・・・・」
「大丈夫!僕達二人で歩けばきっと上手く行くさ!太陽はいつでも僕達を見守ってくれてるんだから・・・。 そして夕奈さんもきっと見ていてくれるはずなんだから・・・! そうだろ、朝奈ちゃん!!」
「は、はいっ。そうですよね・・・♪」
そして僕と朝奈ちゃんは、手の平を太陽にそっとかざす・・・。
手をかざした時・・・。
見ればその手は透き通り、その目には血管や細胞までが写し出されていた。
そこで波打つ血液の流れは生きていることの証・・・。
『てのひらを、たいように』をプレイした時・・・。
透き通っていたのは主人公達の心。そこには過去の自分達が映し出されていた。
登場人物の心は自分自身の中にもある心・・・。
太陽は、全ての人を暖かく包み込んでくれる・・・。
(以上。 こんなことを書きましたが、「てのひらを、たいように」は言葉に出来ない面白さがありました。相当お勧めです・・・)