報告5:「喫煙も鉄槌も遠慮なくだよ♪」
(被害者:新幹線『のぞみ』車掌)




さわたり(仮名)、社会人。
実家からの帰途、『のぞみ84号』の車内・・・。
喫煙席に座るも、隣の2席が両者とも子供のため、タバコを吸うのをためらっていた・・・。





「いくら今が帰省ラッシュとは言え・・・・。」

「何でよりにもよって、二人とも子供なんだ? 何故喫煙席など取ったんだ。副流煙は子供にとってきつかろうに・・・。 全く、親の配慮が足りない」

「かと言って、いきなり分別もつかない子供に向かって『タバコ吸っていいかな、ボク達?』なんて言い辛いし・・・。まさか嫌だとは言うまいが、それじゃあ俺が自分勝手な悪者みたいじゃないか・・・」

「俺だって同じ料金払ってるのに・・・。ああ、余計な事を考えてしまうのは損な性格なのかなぁ・・・」






「お困りのようですねぇ・・・?」


「ん?ああ、ひよりんか。まあね・・・」

「・・・な、何か、全然動じなくなってるんですけど・・・」

「さすがに慣れたのでね・・・。それより勝手に乗り込んで大丈夫なのか?『のぞみ』は全車指定席だろ?」

「魔法少女にはそんなこと関係ないのです〜♪」

「そうか・・・。まあ今回の困ったことは、果たしてこの子供達の前でタバコを容赦なく吸ってもいいのか、それとも潔く我慢するか。そのあたりの葛藤についてかな・・・?」

「別にここは喫煙車両だから、気兼ねする必要なんて無いと思いますよぉ♪」

「まあでも、そんなルールとは別物の・・・。何というか、良心の呵責めいたものにどう整合性をつけるか、そここそが今回の争点なんだよ」

「う〜ん・・・。相変わらず変な言い回しですねぇ♪」

「まあ放っときたまえ。で、それよりも・・・。君ならどうするかねこの状況・・・?」

「もう〜♪さわたりさんは、バカですねぇ〜♪」

「何故、そう思う?」

「さっきも言いましたけど、ここは誰にも気兼ねなく喫煙していい場所なんですよぉ♪」

「その通りだ」

「でもさわたりさんはぁ、子供を気遣ってその自由を放棄しようとしてるんですよね〜?」

「当たり前だ。こんな無邪気な顔を見せる子供の顔を、どうして悪意あるタバコの煙で曇らせることが出来よう?それは、少々可哀想ではないか?」

「でも、とぉっても吸いたいんでしょお?」

「当然だ。俺は愛煙家だもの」

「だったらぁ、さっさと子供達に聞けばいいんですよぉ。『たばこ吸ってもいいですか?』ってね♪許可取らないとダメって思うんなら、それを取るしか道はないじゃないですかぁ♪」

「でも、それじゃあまるで強要してるみたいだろ?それをやりたくないから悩んでるのに・・・」

「ふぅ〜、しょうがないですねぇ・・・♪これで言ってもわからないなら、私が変わりに教えてあげるまでです〜♪」

「え?教えるって、ひよりんまさか・・・?」




「はぁい、そこの君達〜♪」

「なに、おねーさん?」

「おい、余計なことを・・・!」

「この隣のおじさんがぁ、タバコを吸いたいって言ってるんだけどぉ♪」

「あ、そうなんだ?」

「君達に煙がかかっちゃうと思うけどぉ・・・」

「うん」




「吸っちゃってもいいかなぁ〜♪」



「うん、別にいいよ♪ 」

「なっ・・・!?あっさりと・・・?」

「ありがとうねボク〜♪」

「おじさん、別に気にしなくていいよ・・・。お父さんとかもよく吸ってるし、第一ここってタバコ吸う人の席でしょ?」

「はぁい、そのとおりでぇす♪ そういうわけでさわたりさん、遠慮なく吸ってくださ〜い♪」

「・・・・・そ、そうかね・・・? じゃ、じゃあ失礼して・・・。」


シュボッ・・・!
・・・・・・・・・スパーッ・・・!


「・・・・・うーむ、やはりタバコは美味い」

「はぁい♪これで万事解決ですねぇ、よかったよかった♪」

「美味しい?おじさん?」

「まあね・・・。何か悩んでた自分が馬鹿らしいが・・・。最近の子供は意外と物事を考えてるんだなぁ、ビックリしたよ・・・」

「そういうことです〜♪世間のルールは大人も子供も同じこと。渡る世間は鬼ばかり。小さい子なりに分ってるんですねぇ♪」

「そこのおねーさんの言うとおりだよ、おじさん。 甘く見ないで欲しいね♪」

「うーむ、都会の子供はスれてるなぁ・・・。まあしかし、世間の実情は良く分ったよ。 最初は子供だと思ってたけど・・・、もう舐めない。毛ほども舐めたりしない・・・」

「そうですかぁ♪ じゃあ、今回はお役に立てたということで、失礼しま〜す♪」

「ああ、どうもありがとうひよりん。ところで向こうから車掌さんが凄い形相で歩いてきてるんだけど・・・」

「はい・・・?」


ズンズンズンズン・・・・


「こら、君かっ!無銭乗車をしているという人間はっ! 『のぞみ』は全車指定席だって知ってるのか?切符はどうした?見せたまえ!?」

「え〜?そんなのあるわけ無いじゃないですかぁ♪」

「何、開き直ってるんだ!人間社会では、誰であろうとルールに従うのが常識だよ! 君はそれを守らないとでも言うのかね!?」

「え・・・、でも私、魔法少女なんですけどぉ・・・」

「ハァ、何だって!?魔法少女ぉ!? 私はそんな狂言に付き合ってる暇は無いんだ。 気持ち悪い服着て何を言い出すかと思えば全く・・・。そんなヒマあったら、勉強でもしてなさい!」

「えっ?」

「うわ、マズ・・・」

「さあ、魔法ごっこなんてどうでもいいから、とりあえず来たまえ!こってりと絞ってやる!」

「う゛・・・う゛う゛う・・・。 ごっこじゃないもん・・・本物だもん・・・」

「車掌さん、危ないですよ・・・ボソリッ」

「ん?何か仰いましたかお客様?・・・・・・・・って、うおっ!?」









「うえ〜ん!車掌さんの、分からず屋ぁ〜っ!!」



バキィッ・・・・!!


「グハァッ・・・!!何をするこの変質者ッ・・・ぐぉうっ!!」

ビシッ・・・! ビシッ・・・! ビシッ・・・!!

「や、やめっ! がっ・・・! がっ・・・! がはぁっ・・・!!!」

ドゴッ・・・!! ドゴッ・・・!!

パリーンッ・・・!



「うえ〜んっ・・・!」









・・・・・・・・・・
「うーむ、今回はやけに念入りだなぁ・・・。車掌さん、ご愁傷様です・・・」

「ねぇ、おじさん。 あのおねーさんって、本当に魔法が使えるの?」

「ん?まあ実際のところは分らないけど・・・」

「うん・・・」

「正直な心があれば、それは可能になるかもしれないよ? 君のような、物分りのいい子供のようにね・・・」

「ふーん。よくわかんないけど、世の中って難しそうだね・・・」

「全くだねぇ・・・。 まあ君も追々分って行くさ。大人になるに連れて、ね・・・。 まあ何にしても今はタバコがただ美味い・・・」

フーッ・・・・・
・・・・スパーッ・・・・・・・!








・・・・
・・・・・・・・・・
このぉっ・・・!このぉっ・・・!
ゆ、許して・・・誰か助けて・・誰かっ・・・!
・・・・えいっ!・・・えいっ・・・!
ひ、ひぃ〜・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・




新幹線『のぞみ84号』、煙漂う16号喫煙車両・・・。
無銭乗車の乗客を発見するも捕まらず、鉄道警察を以ってしてもその行方はつかめなかったという・・・。






「子供の笑顔はフリーパス!魔法少女もフリーパス! 世間の常識だよぉ♪ えへへ・・・」







「そんなわけ無かろう。 勉強しなおして来い変質者め・・・。ガクッ・・・!」